通年採用を目にする人も多いのではないでしょうか。
かつては新卒一括採用が当たり前でしたが、今後は通年採用が増えると言われています。
今回は、「通年採用って何?」という方のために、通年採用についての基礎知識をご紹介します。
また、メリット・デメリットを挙げますので、通年採用の何がいいのか、悪いのかを考える参考にしてみてください。
目次
通年採用とは
通年採用とは、年間を通して企業が採用活動を行うことです。
なぜ、通年採用があるのかというと、留学生や帰国子女などの学生が、春入学に間に合わず秋入学することがあり、その流れで“秋入学”にならった採用をするようになったからです。
つまり、採用される側の学生の事情がグローバル化、多様化したことが関係しています。
企業はより良い人材を得るために、通年採用を一般化して、一人でもいい人材を得ようとしているのです。
また、最近では就職活動が短期化したとも言われます。
以前は大学3年生の秋から積極的に就職活動を行う学生が少なくありませんでしたが、昨今では4年生になってから就活を始める学生が増え、面接の解禁も大学4年の6月からとなりました。
売り手市場の傾向もあって、いい人材を得るためには通年採用を導入せざるを得ない事情もあるのでしょう。
通年採用の対極にあるのが、新卒一括採用です。
新卒一括採用とは、同じ時期に新卒学生を一括で採用してしまうこと。
このタイミングでエントリーしない学生は、その企業の採用活動には参加できないことになります。
新卒一括採用のメリットは、一斉に採用活動ができ、研修などの教育も一斉にできてコストの削減につながることです。
ただ、もっとじっくり検討したい学生がいた場合、その学生はエントリーを見送る可能性があります。
もしエントリーして内定となっても、企業研究が浅く、就活においてのミスマッチが発生する可能性もあります。
コスト面ではメリットがありますが、企業本位になりがちなのが新卒一括採用です。
通年採用の取り違いにも注意を
通年採用が増加するなかで、「通年採用」の意味を取り違えているケースがかなり多いようです。
例えば、いつでも採用してもらえるという判断から「卒業後にゆっくり面接を受けよう」とする学生がいます。
しかし企業側は、「年中募集しているだけで、面接に来てほしいのは大学生」ということがあるのです。
企業によっても解釈が違うため、もし、憧れている企業があるなら、学生は企業がどのようなつもりで通年採用をしているのか、募集要項などを確認しておいた方が安心です。
新型コロナ感染症と採用市場
新型コロナ感染症が拡大し、採用活動も大きく変わりました。
これまではほとんどが対面での面接だったものが、オンライン面接に切り替えるなど、インターネット採用が本格化しているのです。
多くの人が、このような社会のパラダイムシフトをすでに実感しているでしょう。
そんな社会の変化があるなか、通年採用を導入する企業が増えています。
「今が前例を覆すとき」
「他社と横並びで本当にいいのか」
「通年採用がこれからの標準になるのでは」
「各社、通年採用へ移行していくだろう」
と、多くの企業で働く人が、通年採用の導入が当たり前になると考えています。
ただ、多くの企業が「通年採用が今後のスタンダードになるのでは」と感じている一方で、導入の難しさも感じています。
例えば、これまでは3月や4月に新入社員が入ってきていた企業では、それ以外のタイミングで新人を受け入れる習慣がありません。研修、人員配置など、年間のスケジュールがすでに習慣化されているのです。
これまでは新入社員の入るタイミングを踏まえてプロジェクトを企画したり、人員配置したりしていたのが、通年採用ではこれまでと違うタイミングで入社するようになります。
すると、プロジェクトや人員配置などにも影響を与えることになるでしょう。
そのため、新卒一括採用のみで採用活動をしていた企業は、通年採用に切り替えると、これまでの慣習を見直さざるを得なくなります。
長年続けてきた慣習を変えるのは簡単ではありませんので、なかなか通年採用が推し進められないのです。
同じ業界で通年採用を先駆けて行うと「抜け駆けした」「青田買いだ」と、同業者から睨まれる可能性もあります。
これまでも通年採用を検討して導入してこなかった企業には、同業他社の目を気にして、踏み切れなかったという企業も少なくありません。
ただ、新型コロナ感染症による風向きの変化が、通年採用を推し進めていることは間違いありません。
また、2021年卒の新卒採用から、就活ルールを廃止すると経団連が発表しています。
このような時代の変化があるなかで、業界や地域によっても差が出るかもしれませんが、2022年頃からは本格的に通年採用が増えていくはずです。
通年採用のメリット:学生側
まずは、通年採用の学生側にあるメリットを見ていきます。
余裕を持って就活できる
通年採用は年中人材を募集していることになります。
そのため、新卒一括採用よりもフレキシブルに就職活動を開始でき、スケジュールが縛られません。
「短期留学してから就職活動したい」
「資格試験に合格してからエントリーしたい」
という学生の希望も叶いやすくなるのです。
これまでは、スケジュールが重なって会社説明会に行けなかったり、エントリーできなかったりした学生も少なくありません。
スケジュールのためにどちらかの企業に辞退を告げた学生もいたでしょう。
しかし、通年採用はスケジュールの自由度が高くなるため、満足の行く就職活動ができるでしょう。
1社集中しての就職活動も可能
新卒一括採用の場合、エントリーの締め切りが決められていました。
しかし、通年採用となればエントリーの締め切りは実質ないので、いつでもエントリーができます。
「この企業に絶対に入社したい」と思えば、満足いくまでじっくりと企業研究することができるでしょう。
納得するまで活動できるので、満足の行く就職活動ができるようになるでしょう。
通年採用のメリット:企業側
次は、企業側にあるメリットを見ていきましょう。
年中採用できる
当然のことですが、企業は年中人材を採用できます。
足りないときに、足りない部署に人材を送ることができ、無駄がありません。
また、採用活動では内定を出しても辞退されることがあります。
その場合も、通年採用であればいつでも人材を保管できるので安心です。
じっくりと選考できる
じっくりと採用活動に集中できるのは、学生側も企業側も同じです。
お互いにじっくりと健闘できるので、入社後のミスマッチも大幅に減らすことができます。
新卒一括採用とは、企業側もバタバタと落ち着かないなかでの採用になるため、通年採用の方が無駄を減らすのに役立つでしょう。
多様な人材に出会える
留学していた、帰国子女だという学生でも応募しやすくなります。
これまでに会ったことのないタイプの学生にも、出会えるかもしれません。
これまでは新卒一括採用に参加できる学生に限られましたが、年中応募できるようになることでグローバル化に対応することができます。
通年採用のデメリット:学生側
いいことばかりに見える通年採用ですが、学生側にはデメリットもあります。
よりスキルを磨く必要がある
通年採用は、新卒一括採用よりも多くの学生が公平に採用試験に挑戦できます。
そのため、よりスキルを磨いておかないと、なかなか採用してもらえないというデメリットもあります。
企業もじっくりと比較して採用を検討するため、より資格や経験、面接での評価が高くないと、採用してもらえなくなるかもしれません。
積極性を持って活動する必要がある
通年採用は新卒一括採用よりも、積極性が求められるでしょう。
新卒一括採用の場合は、企業が多くの学生を説明会へ呼び、応募してもらおうと学生へ働きかけます。
学生はその声に従い、説明会へ行ってエントリーシートを出せば、採用試験に参加できました。
しかし、通年採用の場合は年中説明会があり、採用試験にエントリーすることができます。
企業側の募集を求める声もこれまでよりは低調になるでしょう。
そのため、ある程度自ら情報を求めて動く必要があります。
自分から積極的に活動出来ないタイプの人は、計画的に就職活動をしないと、大学生活があっという間に終わってしまうかもしれません。
通年採用のデメリット:企業側
通年採用はいいことばかりに見えますが、企業側にもデメリットがあります。
新卒採用よりもコストがかかる
通年採用はコストがかかるのがデメリットです。
これまでは新卒一括採用の時期だけにコンサルタントに頼り、募集の広告を打ったり、説明会を開いたりすればよいだけでした。
しかし、通年採用になることで度々コンサルタントに採用のアドバイスを受けたり、募集の広告を打ったり、説明会の会場を押さえたりしなければなりません。
リクルーターが通年に及び採用活動に参加することで、通常の勤務時間が減らされてしまうという影響も出ます。
新卒一括採用の時期は外せない
他者が新卒一括採用をしている限り、この時期の採用活動は外せません。
なぜなら、他者の新卒一括採用に、学生が流れてしまうかもしれないからです。
通年採用をしていても、新卒一括採用の時期に募集をかけられなければ、結局はいい人材を取り逃がすことにもなりかねません。
また、新卒一括採用の時期を外れてからやってくる学生は、どこにも内定がもらえなかった学生であることも少なくありません。
「仕方なく面接を受けに来た」というタイプの学生もいるため、エントリーが増えた割には内定数が少ないということもありえるでしょう。
内定蹴りが増える可能性も
いつでも就活できるようになると、学生がいつ内定蹴りするかわかりません。
せっかく内定を出しても、内定蹴りする学生が増えれば、なかなか採用できないで終わる可能性もあります。
通年採用は今後増える傾向
まだまだ手探りかもしれませんが、今後は通年採用が増える傾向にあります。
新型コロナ感染症の影響もあり、パラダイムシフトが進む社会では、新たな採用方法も比較的早く導入されていくでしょう。
メリット・デメリットはありますが、まだまだ制度が整っている採用方法ではありません。
希望する企業がどのような採用活動がしているかは、注視して理解してから検討する必要があるでしょう。